『木登り」
いつもの公園での散歩。 童話から抜け出してきたような兄妹が、知らぬ間にチコに足並みをそろえていた。 「ねこちゃんのヒモ、ちょうだい」女の子はそう言うのと一緒に、チコのリードに手をかけていた。 チコと幼い妹、そしてそれを見守る幼い兄。メルヘンタッチの光景を夕日がセピア色にした。
 (写真はクリックすると拡大します) 絵を壊すかのように母親が割り込んできた。 妹はその母親に気をとられて、チコのリードを放した。 チコが駆け出した。そのチコを幼い兄が追った。
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チコは、男の子に追われて、いちもくさんに杉の木を駆け登った。ふだんなら、ぜったい登らない、まっすぐで、でくの坊の杉の木。 チコは、登ったはいいが、二度と下りることができなくなった。

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杉の木のてっぺん近くまで登って、ぶるぶる震えるチコ。 てっぺんに登れば登るだけ、枝は細く、じきにメリメリと折れる。 「チコが落下して死んでしまう!」 私は、そう叫んだ。 「いいやその前に、、首からぶら下げたままのリードが枝に引っかかって、首吊り自殺状態になる!」 写真家は、そう言うなりに走り去った。
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写真家はしばらくすると、梯子を持って戻ってきた。 しかし―― 杉の木の方がはるかに高く、とうていチコのいる枝には届かなかった。 そうしてる間にも、ミシミシと枝が折て落ちてきた。 「ビエ〜ン!」チコは足場をなくして、前脚だけで枝にぶら下がった。 「落ちるなチコ!」 写真家も叫んだ。
(次回に続く) テーマ:ノンフィクション - ジャンル:小説・文学
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